民主主義と地方自治
民主主義の原則
民主主義の原則とは何でしょうか。多数決の原理、少数意見の尊重などは誰でもすぐに挙げることができますが、それ以外にもいくつかの必須項目が存在します。民主主義の原則は様々な国や組織、団体、大学などで定義されていますが、そこに挙げられている項目の数もさまざまで、内容も少しずつ異なります。国連の人権委員会(現在の人権理事会の前身)も、2002年に民主主義の必須要素として10項目の要件を挙げています。それらの中で、アメリカ国務省がその出版物の1つに記載しているものでは、民主主義の原則が具体的に分かりやすく述べられています。
- 民主主義とは、市民が直接または自由選挙で選ばれた代表を通じて、自らの権限と義務を遂行する統治形態である。
- 民主主義とは、人間の自由を守る一連の原則と実践である。すなわち、自由を制度化したものである。
- 民主主義は、多数決の諸原則と、個人および少数派の権利を組み合わせたものを基盤としている。すべての民主主義社会は、多数派の意思を尊重しながら、個人および少数派グループの基本的な権利を熱意を持って擁護する。
- 民主主義体制は、全権が集中する中央政府を警戒し、政府機能を地方や地域に分散させる。それは、地方自治体が、市民にとって可能な限り身近で、迅速に対応できるものでなければならないことを理解しているからである。
- 民主主義体制は、言論や信教の自由、法の下で平等な保護を受ける権利、そして社会での政治的・経済的・文化的な生活を組織し自由に参加する機会などの基本的人権を擁護することが、その最も重要な機能の1つであることを理解している。
- 民主主義体制は、すべての市民に対して開かれた、自由で公正な選挙を定期的に実施する。民主主義社会での選挙は、独裁者や単一政党の隠れみのとなる見せかけの選挙ではなく、国民の支持を得るための真の競争でなければならない。
- 民主主義は、政府を法の支配下に置き、すべての市民が法の下で平等な保護を受けること、そして市民の権利が法制度によって守られることを保障する。
- 民主主義体制のあり方は多様であり、それぞれの国の独自の政治・社会・文化生活を反映している。民主主義社会は、画一的な実践ではなく、基本的な諸原則の上に成り立っている。
- 民主主義体制の市民は、様々な権利を持つだけでなく、政治制度に参加する責任を持つ。その一方で、その政治制度は市民の権利と自由を保護する。
- 民主主義社会は、寛容と協力、譲歩といった価値を何よりも重視する。民主主義体制は、全体的な合意に達するには譲歩が必要であること、また合意達成が常に可能だとは限らないことを認識している。マハトマ・ガンジーはこう述べている。「不寛容は、それ自体が暴力の一形態であり、真の民主主義精神の成長にとっての障害である。」
(アメリカンセンターJAPAN 民主主義の原則―概要: 「民主主義とは何か」、和訳一部修正)
地方自治と民主主義 (二元代表制)
日本の地方自治においては、民主主義を機能させるための形態として二元代表制の仕組みを取っています。この仕組みでは、首長と議会議員を別々に選挙によって選ぶことで両者の間でチェックアンドバランスを機能させ、、民主主義が維持されることを目的としています。しかし、この仕組みだけで民主主義が機能するわけではありません。首長(行政)と議会議員のそれぞれが民主主義に対する明確な意識を持ちながら活動しなければ、民主主義つまり真に住民のための地方自治は達成されません。国連が定めた民主主義の原則の中には、「表現と意見の自由」や「行政における透明性と説明責任」なども含まれています。沼津市議会での山下、江本両議員に対する懲罰問題や山下議員に対する市の提訴の問題などでは、これらの原則は尊重されているでしょうか。また、二元代表制は機能していたでしょうか。今市民に求められているのは、一人ひとりが高い意識を持って行動することです。結局は、それが私たちの権利を守ることになるのです。